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FinTechとは何か?普及した背景や関連技術、FinTechの活用事例を紹介

本記事ではFinTechの普及した背景や関連する技術、FinTechを活用したサービスについて紹介します。

FinTechとは何か?普及した背景や関連技術、FinTechの活用事例を紹介

本記事ではFinTechの普及した背景や関連する技術、FinTechを活用したサービスについて紹介します。

知識・情報

2022/06/22 UP

FinTechという言葉をご存じでしょうか。あまり馴染みのない方もいるかもしれませんが、私たちの身近なサービスにも多く活用されており、日々の生活に大きな影響を与えています。本記事ではFinTechの普及した背景や関連する技術、FinTechを活用したサービスについて紹介します。

FinTechとは

Fintechに関する概要と、近年私たちの身の回りに普及した背景について説明します。

FinTechの概要

FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)の二つの言葉を組み合わせて作られた造語。金融業界の事業にIT技術を組み合わせることで、これまでにない新たなサービスや事業領域が展開できるようになりました。

AIやブロックチェーン、APIなどのIT技術を活用するベンチャー企業が次々と登場。金融業界の事業やサービスがITの力で再構築されることで、生産性やユーザーの利便性が高まります。なかには既存の金融機関の仕組みとかけ離れたシステムもあり、社会全体の効率化が進むことが期待されています。

FinTech普及の背景

2008年に起きたリーマンショックによる世界的な金融危機により、多くの先進国において規制が強化され、金融機能が後退しました。同時期に、新興国では大きな経済成長が見られていたのですが、高まる金融サービスへの需要が十分に満たせない状態でした。

一方で、ITの世界では情報通信技術の革新や普及が進みました。高性能なスマートフォンを一人一台持つようになったこと、データ解析技術が向上したことなどが挙げられます。個人が世界に向けて情報を発信し、世界中の情報をリアルタイムに受け取れるようになったのです。

金融業界の需要と供給のミスマッチに対し、IT企業などが安価で便利な金融サービスを提供したことがFinTechブームの始まり。金融サービス同士の統合が容易となり、非金融業でも新たな金融サービスを作り出せるようになりました。これまで金融が発達していない新興国においても金融サービスが広がるなど、社会のあり方が大きく変わろうとしています。

FinTechの技術

FinTechの技術

FinTechには最新のIT技術が活用されています。代表的な4つの技術について、各技術の仕組みやFinTechにおける使用例などを解説しましょう。

AI

AI(人工知能)とは、人間が脳で行なう知的作業をコンピュータが模倣する技術全般のこと。FinTechで用いられるAIは、おもに機械学習やディープラーニングなどを指します。機械学習は大量のデータをAIモデルに与えて学習させる技術であり、ディープラーニングはAI自身がデータから特徴を見出して学習する技術です。

作成したAIモデルに解析したいデータを入力することで、人間の代わりにさまざまな判断ができるようになりました。例えば、AIを用いて各ユーザーに合わせた投資判断を行なうシステムが開発されています。

ビッグデータ

多種多様なビッグデータをもとに学習することで、AIの予測精度はより高度になります。元となるデータにはECサイトの購入データや顧客の個人情報などがあり、近年はIoTの普及で情報通信端末が増えていることから、世のなかにあるデータ量も増えています。

例として、車の運転技術や車両の状態から保険料が決まる自動車保険を紹介しましょう。保険加入時に小型の計測器が貸与され、スピードや急ブレーキなどの運転特性を計測。計測結果に応じて保険料が一部キャッシュバックされるというものです。顧客の一人ひとりにおける保険料が削減できるだけでなく、安全運転が促進されることで、顧客全体での保険料削減効果も期待できます。

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、ネットワーク上でデータを分散管理し、高い信頼性を担保する台帳技術のこと。分散管理しているためデータの改ざんが困難であり、取引記録のトレーサビリティを残せるといったメリットがあります。

ビットコインなどの仮想通貨に使われていることから話題になりましたが、キャッシュレス決済のような決済システムにも使用されている技術です。ブロックチェーン上で決済処理することで、仲介にかかる手数料やコストを削減でき、取引記録も残せるため安全性が高まります。

API

APIとは、異なるアプリケーション同士をつなげて機能を共有する技術のこと。外部のプログラムやサービス、データなどの部品を統合させて活用できます。既存の部品の組み合わせで新たなサービスを構築できるため、開発工数の削減につながります。

使用したい機能のAPIが公開されていれば、そのまま使用したり、一部のみ改良したりといった使い方も可能。APIの活用によって金融業同士の連携だけでなく、金融業と非金融業との連携もスムーズに行なえるようになりました。非金融企業の事業サービスに金融サービスを組み込めるようにした「組込型金融サービス」の取り組みが進められています。

FinTechによるサービスの例

FinTechの技術を用いたサービスはすでに世のなかに普及しており、多くの人が利用しています。サービスの代表的な例を紹介しましょう。

キャッシュレス決済

QRコードなどを用いたスマートフォン決済への新規参入が増加しています。銀行などの金融機関だけでなく、非金融機関からの参入も増えています。キャッシュレス決済の導入により、支払い手段は口座引き落とし、クレジットカード、ポイントなど自由に選択できるようになりました。

参入事業者にとっては人々の消費活動をデータ化できることが大きなメリット。人々の家計が可視化されるため、生活スタイルに応じた投資商品の紹介などにつなげることも可能です。

PMF(個人財務管理)

PMFとはPersonal Financial Managementの略であり、個人財務管理と訳されます。ユーザー個人のお金の管理をサポートするソフトウェアの総称で、代表的な例は家計簿アプリ。家計簿アプリを用いると、複数の銀行口座や証券口座からデータを取得し、自動的に集計や分類、可視化できるようになります。

複数のデータを一つのアプリで一元管理できるという利便性がメリット。家計管理が容易になり、ユーザーのお金に対する意識改善につながります。またユーザーの消費行動にも大きく影響し、データを自動集計するためクレジットカード決済の利用が増えるといった効果が出ています。

資金調達

資金調達の代表的な例はクラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、個人がインターネットを通じて第三者に資金提供できる仕組みのこと。銀行などの金融機関が行なっていた融資に近いシステムですが、インターネットの技術を活用していることからFinTechの一つです。1人の出資額は少額でも、インターネットを通じて多くの人からお金を集められるため、多額の資金調達が可能となります。

資産運用

AIを用いたロボアドバイザーは、顧客のリスク性向やライフステージに合わせたポートフォリオを作成するサービスです。近年は資産形成のニーズの高まりとともに、証券会社のインターネット取引口座数が増えており、ロボアドバイザー市場も拡大しています。手軽に投資を始められる環境が整っていることから、従来の顧客層と異なる若年層や主婦にも投資が広がっています。

FinTechの今後

FinTechの今後

FinTechは今後どのように発展するでしょうか。また発展にともない、どのような課題があるかについて解説します。

金融間や異業種間の連携の創出

APIの連携により、金融機関同士だけでなく異業種間での連携も可能となりました。これまでにない斬新かつユニークなビジネスが生まれる可能性があり、実際にFinTechのサービスを開発したベンチャー企業も多く誕生しています。

技術面では異業種間での連携が容易になりましたが、実際に連携してサービス開発を進めていくのは、あくまでも人同士です。各業界の慣習について理解し合い、認識のギャップを埋めていかなければなりません。新たなアイデアを生み出す意見交換の場を創出するなど、ビジネスの方法も柔軟に変えていく努力が必要でしょう。

金融分野におけるエンジニアの人材育成

FinTechのサービス開発を進めるには、金融分野に詳しいITエンジニアの人材育成も課題の一つ。金融における実務上の留意事項や、データ倫理が問題になる可能性もあり、注意が必要です。

IT技術の内容としては、AIやビッグデータ、ブロックチェーン、セキュリティなどの分野に強いエンジニアが求められます。これらの分野で高いスキルを持つエンジニアは、FinTech業界だけでなく他分野でも引く手あまたであり、高い報酬水準を設定する企業もあります。

プライバシーに関するデータの扱い

金融分野では顧客の個人情報のデータを活用するため、プライバシーへの配慮は必須。万が一にでも個人情報が流出してしまえば、高額な損害賠償金が発生するだけでなく、企業およびサービスの信頼にも大きな悪影響を与えます。顧客からの信頼が失墜することは、顧客のお金のデータを扱う金融サービスを提供する側として、致命的となりかねません。

生データの質を落とさずに匿名加工し、使いやすい形での統計データにするなど、情報が流出した場合でも被害が最小限となる予防が必要です。また個人情報保護に配慮したデータを企業間で連携することで、新たなマーケティングにつながる可能性もあるでしょう。

FinTechにより金融業界に革新が進む

金融業界の事業にIT技術が組み合わさることで、新たなサービスや事業領域が展開されています。APIとして提供される金融サービスを統合し、非金融業でも新たな金融サービスを作り出せることがFinTechの利点。私たちの身の回りでも、キャッシュレス決済や家計簿アプリ、ロボアドバイザーによる資産管理などのサービスに活用されています。

FinTechが発展していくためには、金融分野に詳しいエンジニアの人材育成や、プライバシーに関するデータの扱いなどの課題があります。金融機関同士だけでなく異業種間での連携も可能になり、これまでにない新サービスの誕生も期待できるでしょう。