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CIOとは?求められる役割や必要なスキルについて解説

CIOがどのような存在なのかを正しく理解できている人は少ないのが現状です。この記事では、CIOの基本的な役割や必要となるスキルについて詳しく解説します。

CIOとは?求められる役割や必要なスキルについて解説

CIOがどのような存在なのかを正しく理解できている人は少ないのが現状です。この記事では、CIOの基本的な役割や必要となるスキルについて詳しく解説します。

知識・情報

2021/03/12 UP

インターネットの普及とともにIT技術が急激に進化し、企業の情報戦略は重要度が増しています。日本国内においても「CIO」とよばれる肩書の役員を置く企業が増え、徐々に一般的に認知される存在になってきたのではないでしょうか。

しかし、CIOがどのような存在なのかを正しく理解できている人は少ないのが現状です。この記事では、CIOの基本的な役割や必要となるスキルについて詳しく解説します。

CIOとは

CIOとはChief Information Officerの略で、日本語では最高情報責任者と訳します。企業の情報戦略における最高責任者であり、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)といったトップ経営陣の一員です。もともとはアメリカで生まれた肩書ですが、IT化が進む中で日本でもCIOを置く企業が増加したといわれています。

CIOの役割

CIOには大きく2つのメインミッションがあります。

・経営戦略のうちIT技術に関連する情報戦略の立案や実行

・業務プロセス改革やITリソースの調達・管理を最適化

単純に情報システムやIT部門の統括者という役割だけでなく、経営者の一員として経営戦略に携わる大きな役割を担うのが特徴です。情報技術に関する深い知識はもちろんのこと、企業経営に関する知識が必要となるポジションといえるでしょう。

近年IT技術の高度化やデジタル技術の進化など、企業経営において情報戦略は軽視できません。実際に情報システムやデータの利活用によってビジネスを大きく展開した企業の活躍事例もあり、CIOの役割は近年益々存在感を増しています。

日本とアメリカでのCIOの違い

日本とアメリカでのCIOの違い

CIOという役職が一般的に普及し、経営陣の情報活用に関する理解も深いアメリカと比較すると、日本におけるCIOは認知度・実態ともに未だ発展途上といえるでしょう。ここからは、2018年に経済産業省が報告した「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」の内容を参考に、日本とアメリカでのCIOの違いについて解説します。

アメリカのCIO

アメリカではCEOやCOOと並んで企業におけるトップマネジメントとして、CIOが高い地位を持ちます。IT部門長のように情報システムを最適化する職責から大きく踏み込んで、企業グループ全体を俯瞰した情報ビジネスを主導するのが特徴です。大学やMBA、ロースクールなどの教育機関でも、IT技術や経営学などの知識を習得し将来CIOに就任することを狙うコースも用意されており、人材育成も盛んに行われています。

経済産業省のDXレポートでは、日米のCIOの相違点としてベンダー選定の行動スタンスに言及しました。アメリカのCIOは複数のベンダー企業からの提案を客観的に評価・選出し自社のビジネスに適用することで結果を出すことを求められています。自社内で情報利活用の推進やシステム開発をリードする責任があり、結果に対する責任もCIOが負うのが大きな相違点です。

日本のCIO

総務省の調査結果によると日本におけるCIOの設置率は2018年時点で11.2%とアメリカなどの諸外国と比べると低く、設置されていたとしてもCIOの立場が弱いのが現状です。

また、日本のCIOは過去に付き合いのあるベンダーの提案を鵜呑みにし、ベンダーに丸投げとなるなど、ベンダー選定における課題もあります。ベンダーに丸投げしてしまうため、要求仕様・指示の抜け漏れがありトラブルが発生したとしてもベンダーの責任になってしまいがちです。ベンダーに依存し、全てを委託することになるので社内にノウハウも蓄積されません。

日本においてCIOという役職設置はスタートしたばかりで、まだまだ未開発の領域です。今後優秀なCIOが増加し存在感を発揮できれば、日本のCIOの位置づけも変わっていくでしょう。

CIOの管轄領域

CIOの具体的な役割としては以下3つの管轄領域を統括することにあります。ここからは3つの管轄領域について、それぞれ詳しく紹介します。

ITマネジメント

ITマネジメントとは、会社全体のITに関わる活動全体を管理・運営する活動です。CEOなど経営陣と協力しながら自社のデジタル戦略・IT戦略を立案し、売上向上やコスト削減などの課題に取り組みます。ビジネスにおいて投資効果が最大になるように適切な予算配分を主導したり、ITを武器に組織改革を推進したりするのがミッションです。

また、優秀なIT人材の確保育成も管轄領域の一つです。具体的には、IT組織のチームマネジメントやモチベーションマネジメントといった人材管理と、育成手法や社内キャリアパスの整備などの人材育成などが挙げられます。

ITリスクマネジメント

ITリスクマネジメントとは、サイバー攻撃や機密情報の流出などリスク管理やセキュリティ対策の管理・運営を指します。セキュリティインシデントへの対策を怠ると、株価の下落、顧客離れ、投資資金の引き上げ、取引停止など経済的なダメージはもちろん、社会的な信頼を一気に失う事態になりかねません。

既存のビジネス活動や、将来的な成長に関わる様々なセキュリティリスクを適切に評価し、セキュリティ対策への投資を主導することがCIOのミッションです。また、セキュリティへの意識の低い経営層への啓蒙活動など、企業全体がセキュリティ対策に積極的に取り組める土壌づくりもCIOに求められています。

ITビジネス創出

ITビジネス創出とは、・ITを活用し新たな新規事業の創出を推進する活動です。社内から新規ビジネスのアイデアを広く収集する仕組みのマネジメントや、自社だけでなく他社や大学・自治体などと協同しオープンイノベーションを推進します。

また、これらの活動を通じて得られた知見やアイデアをPoC (概念実証)など手法を取り入れながら、社内外の人材・リソースを組み合わせてビジネスとして昇華させることもCIOに求められます。

CIOに必要なスキル

CIOに必要なスキル

経営に関する知識とITに関する知識の両方をバランスよく習得し、活用できることがCIOに求められるスキルです。会社を代表するIT責任者として求められるスキル水準は高く、豊富な実務経験も必要となります。ここからは、CIOとして活躍するために必要なスキルを5つの観点から解説します。

ITリテラシー

通信・ネットワーク・セキュリティなどIT全般に対する高度な理解、操作する能力が求められます。最新の技術動向だけでなく、他社のセキュリティインシデント情報を積極的に収集し自社のセキュリティ対策に展開することも必要です。

ITリテラシーが十分でないと、社内のIT構築・運用に対する活動の把握ができなかったり、IT施策をコストベースで判断してしまったりと、IT組織のマネジメント不全に陥ります。ITに関する高度な知識習得は必須のスキルといえるでしょう。

情報セキュリティ

自社のシステム開発および運用などビジネス活動において想定されうるセキュリティリスクに対する知識が必要です。具体的には、次のようなものが挙げられます。

・ITリスクの管理方法

・情報セキュリティ管理

・個人情報保護

・セキュリティ関連法規

CIOには、日々巧妙化するサイバー攻撃や、情報流出などに対向する技術を積極的に収集し、予防・是正のために活用することも求められます。

経営的視点

CIOは自社の経営戦略を担う責務と、それを遂行するための権限を与えられた経営陣の一人です。そのため、IT部門の責任者という立ち位置ではなく経営的な視点でIT戦略を立案・実行することが求められています。

CIOの評価基準としてもシステムのSLA・可用性などの指標やIT予算など従来のIT部門長への評価ではなく、売上や競争力の強化などビジネス成果で測られるのが一般的です。

また、自社の置かれた状況や業界の行き先・将来について明確なビジョンを持ち、強力なリーダーシップで自社を指揮することもCIOに必要なスキルといえるでしょう。

マネジメント能力

CIOの業務において、IT部門以外にも業務部門や財務部門など多くの部署責任者、およびベンダー企業役員などさまざまな関係者たちとの交渉・調整が日常的に発生します。

経営資源であるヒト・モノ・カネや情報を有効活用しビジネスを継続・成長させられるマネジメント能力は、CIOに必須の能力です。

コミュニケーション能力

社内外の関係者と信頼関係を構築し、ビジネスを円滑に進めるためにはコミュニケーション能力が欠かせません。社内外に対して自分がどんなビジョンを持っているのか、どんな風にITを活用してほしいのか、コミュニケーションを通じてしっかりと発信し、自身の活動に理解を得ることが重要です。

CIOのキャリアパス

CIOは管轄領域が幅広く、決まったキャリアパスはありません。IT系出身者も、業務・ビジネス系出身者もどちらも存在しますが、IT・経営の両方についての経験が必要となります。そのため、どちらかを極めてからキャリアの途中で足りないスキル・経験を補足するようにキャリアを積んでいくのが一般的です。

社内人事で昇格するケースでは、4年制大学や大学院卒業後に採用され、SEやソフトウェアエンジニアとして情報システム部に配属。そして最終的に出世して、CIOに到達するのがモデルケースとなります。

また、社外からスペシャリストをヘッドハンティングなどで調達するケースも近年増加しています。このケースでは、情報システム部門やSI・コンサル企業においてITプロジェクトを推進してきた経験のある人材をCIOとして招くことが多いです。

CIOは今後さらに重要度を高めていく

AIやRPA、5Gなど日々進化する高度な情報社会において、企業が競争力を維持し勝ち残っていくためには、情報デジタル戦略は欠かせません。日本においてはまだまだ普及率は低いですが、ITのバックボーンを持ち情報デジタル戦略の立案・推進を担うCIOが今後なくてはならない存在になっていくことは明白です。