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システムアーキテクト(SA)とは?メリットやエンジニアとの違い、業務内容・試験の概要も解説

システムアーキテクトの業務内容の詳細やシステムエンジニアとの担当区分の違い、資格取得によるメリットに触れていきたいと思います。

システムアーキテクト(SA)とは?メリットやエンジニアとの違い、業務内容・試験の概要も解説

システムアーキテクトの業務内容の詳細やシステムエンジニアとの担当区分の違い、資格取得によるメリットに触れていきたいと思います。

キャリア

2023/02/27 UP

IPAが定めた情報処理技術者試験のレベル4に位置する国家資格であるシステムアーキテクト。似たような職種にシステムエンジニアがありますが、2つの差を正しく理解できている方は少ないのではないでしょうか。

システムアーキテクトは、開発におけるもっとも上流となる構想段階から参画し、システムの根幹となる基礎設計を担います。また、ITコンサルタントとしての立ち回りも担い、クライアントが描くビジネスモデルをシステム開発によってどのように実現するのか現実的かつ具体的な構成を考え、設計に落とし込むことを求められることもあります。

ここではそんなシステムアーキテクトの業務内容の詳細やシステムエンジニアとの担当区分の違い、資格取得によるメリットに触れていきたいと思います。

システムアーキテクトとは

システムアーキテクトとは

IT業界ではプログラマーやエンジニアの上級職に位置するシステムアーキテクトは、経済産業省が認定する国家資格である「情報処理技術者試験」の試験区分のひとつにもなっています。試験のレベルは最上位のレベル4となり、毎年合格率は10%台にとどまります。上流工程を担当するエンジニアに必要な知識だけでなく、ビジネスに必要な知識も問われる難関資格です。

以下では、そんなシステムアーキテクトの仕事内容やシステムエンジニアとの違いを説明していきます。

システムエンジニアとの違い

システムアーキテクトはクライアント、コンサルタント(ITストラテジスト)が描いているビジネスモデルを実現させるために、どのようなシステム構成にしていくかを考えます。そのため、全体を見通したシステムの設計能力が必要とされる職種です。各エンジニアが設計するための具体的なルール作りや、システムの基本設計を担当します。

一方、システムエンジニアはシステムアーキテクトが作った基本設計をもとにさまざまな機能を設計していく役割を持ちます。そのため、システムアーキテクトが作成したルールや基本設計に矛盾があると、システムエンジニアの仕事にも支障をきたします。つまりシステムアーキテクトは矛盾のないシステムを設計するために重要な役割を担っているといってよいでしょう。

上記のようにシステムアーキテクトがシステムエンジニアとは異なるレイヤーで設計する背景には、昨今のシステム構築が複雑さを増していることが挙げられます。さまざまな技術を組み合わせて開発しながら最新の開発手法を検討・適用するだけでなく、システムの品質をも考慮しながら既存のシステムと連携させるという、舵取りとバランスの難しい立ち回りが求められているのです。

システムアーキテクトの仕事内容

システムアーキテクトの仕事は以下のようなものがあります。


①システムの基本設計

②システムの開発側と顧客側との架け橋の役割

③開発チーム内の意識統一と綿密なコミュニケーションの構築

④インフラの構成でトラブルが起こった際の解決

⑤開発のサポート

上記の通り、システムアーキテクトは開発の初期段階から関わり、開発中も現場の監督業務やサポートなどを行うため、プロジェクトの進行において多くの役割を担っています。

また、関わる相手も開発担当のエンジニアだけでなく、各種要望を出す顧客にまで及ぶため、強いリーダーシップも求められます。

システムアーキテクトに求められるスキルや知識

では、システムアーキテクトにはどのような知識とスキルが求められるのでしょうか。ここでは、大きく6つのスキルをご紹介します。

設計スキル

システムアーキテクトがもっとも求められる能力です。ヒアリングの元クライアントの要求、実際の業務フローなどを把握し、現実的なシステムに落とし込むためには、高い設計スキルが必要となります。

プログラミングスキル

システムアーキテクトの業務の中で、プログラミングのウェイトはあまり大きくありません。しかし、設計の際プログラミングスキルが求められる場面は多くあります。

またトラブル対応で実際にコードを修正する場面なども考えられるため、システムアーキテクトといえどプログラミングスキルはとても重要といえます。

システム全般の知識とスキル

アプリケーションを設計する際は、OS、ネットワーク、サーバ、開発に使用する言語の仕様など、プログラミングスキル以外にもさまざまな知識が求められます。

またインフラなどのトラブルに対する対応なども行うため、システム全般の知識がかかせません。

業界知識

設計の際は、業務フローや業界ならではの慣習などの業界知識も抑えないといけません。最高パフォーマンスが見込めるからといって「クライアント側で運用できない」「既存の運用を意図せず大幅に変更してしまう」といったシステムを設計してしまうと、システムが活用できなくなってしまうためです。

システムアーキテクトは、単にパフォーマンスだけを見るのではなく、クライアント、業界、実際の開発現場などを俯瞰してみて設計を行っていくことが求められます。

コミュニケーション能力

前述の通り、システムアーキテクトの業務として「システムの開発側と顧客側との架け橋の役割」「開発チーム内の意識統一と綿密なコミュニケーションの構築」があります。システムアーキテクトには、こうした「クライアント向け」「チーム向け」の両方のコミュニケーションをしっかりとっていくことが求められます。

単に言われたことを鵜呑みにするのではなく、クライアントファーストになって、先方の要望を聞きながらも「できないものはできない」としっかり説明していくことが求められます。

マネジメント能力

最後はプロジェクト全般を管理し実行していくためのマネジメント能力です。

システムアーキテクトは、単に設計できればよいのではなく、それを元に開発を取り仕切り、クライアントの要件変更などにも対応しながら、しっかり満足いくシステムを納品する必要があります。

イレギュラーな対応も多く発生するなかで、プロジェクトをしっかりとマネジメントしていく能力が求められます。

システムアーキテクト取得のメリット

システムアーキテクト取得のメリット

取得が難しいシステムアーキテクトですが、それだけに資格を取得し、実際に業務につけた場合、得られるメリットは大変大きいものがあります。

メリットは、大きく分けて「市場価値の向上」「幅広いスキル・能力の証明」「構想段階のシステムデザインへの参画」「転職での有利性」の4つです。順を追って見ていきましょう。

メリット1:システムアーキテクトの資格取得で市場価値が向上

システムアーキテクトの資格取得によって、市場価値の高い仕事に従事できる機会が増えるでしょう。現場でも立ち回りが難しい立場ですがチャンスも増えていきます。

担当できる案件の幅も広がり、より上流の設計に携われるため、自然と社内での地位や人材的価値が向上するでしょう。

メリット2:システムアーキテクトは多岐に渡るスキル・知識を持ち合わせている証明になる

IPAは、システムアーキテクトが保有しているべき能力として、スキル、業界知識、マネジメント能力などを定義しています。

前述の通り、スキル、業界知識、マネジメントのどれもシステムアーキテクトにとって重要なものとなりますが、資格を取得することで、これらのスキルや知識を持ち合わせていることを客観的に証明することが可能です。

メリット3:構想段階のシステムデザインにも携わるチャンスがある

システムアーキテクトは、クライアントの要求に対して、まだ具体性を伴わないビジネスやプロセスへの思い、サービス品質への考えなどを取りまとめてシステムの概要を作るところから始まります。ITシステムとしてどう実現できるかを考えて、現実的な設計に落とし込むことが求められます。

そのため、システム開発の超上流に位置する、漠然とした構想に近い段階のシステムデザインから案件に携わることができるようになります。クライアントのイメージから構想を練り上げ、システムをデザインしていくことは、困難な作業ですが非常にやりがいのある仕事です。

メリット4:転職に有利

多岐にわたるスキルを保有する資格のため、転職にも有利です。実務経験が豊富なシステムアーキテクトはまだまだ人材が少なく、各企業で奪い合いになっています。取得が難しい国家資格でもあるため、開発の知識だけでなく、ビジネスやマネジメントに関する知識や経験もアピールでき、有利な条件での転職が期待できるでしょう。資格保有者は引く手あまたといえるでしょう。

また、システムアーキテクトの合格者は弁理士、中小企業診断士、ITコーディネータなどの試験にて、一部の科目免除を受けることができます。そのため、例えばシステムアーキテクトの能力を発揮しながらITビジネスに強い中小企業診断士としてコンサルトしてのキャリアパスプランを作ることもできるわけです。

この他、経済産業省によって設けられたITコーディネータのように、経営とITの両方の知識をもつ専門家として、キャリアを広げていくことも可能です。

システムアーキテクト試験の概要

システムアーキテクト試験の概要

システムアーキテクト試験は、午前は多肢選択式、午後は記述・論述形式の試験となっています。試験に関する注意事項は、公式サイトにある案内書に記載されています。必ず受験年度の案内書を熟読したうえで申し込み手続きをするようにしましょう。

試験の概要

システムアーキテクト試験は全国62都市で実施されています。受験手数料は7500円で、個人でのインターネット申し込みが必要です。団体での申し込みは受け付けていないため、複数名で受験する場合は受験者各自が手続きを行ないます。

受験会場の指定はできず、受験受け付け後に送付される受験票にて通知されます。受験者数が試験地の収容能力を超過した場合は、バス移動や宿泊が必要な会場での受験になる場合もあります。

近年は感染症対策のための検温や書類提出、マスク着用も求められています。ルールを順守できない場合は受験できなくなる可能性もあるので、案内書や受験票は隅々まで目を通しておきましょう。

春期の試験日は、2021年度以降は4月の第3日曜日に開催されています。願書受け付けは1月から2月頃に実施されたので、2023年度の受験を検討している方は1月頃に公式サイトを確認しておくとよいでしょう。また、2022年度の合格発表は6月下旬に公式サイトにて掲載され、書面での通知はありませんでした。

合格率

合格率は低く、例年10%台にとどまっています。2021年度は受験者3433人・合格者567人で合格率は16.5%、2022年度は受験者3474人・合格者520人で合格率は15.0%という結果でした。

システムアーキテクト試験は、実務経験者を対象としたかなりの高難易度試験です。過去問や参考書で知識を深め、受験に備えるようにしましょう。

試験内容

・午前Ⅰ・午前Ⅱ試験

午前Ⅰ試験は50分、午前Ⅱ試験は40分間の多肢選択式試験です。問題数は午前Ⅰ試験が30問、午前Ⅱ試験が25問であり、いずれも100点満点のうち60点が基準点となります。

午前Ⅰ試験では共通的知識が問われます。過去問からの出題が多いため、過去問の学習が有効な対策方法といえるでしょう。また、午前Ⅰ試験は試験免除制度があります。下記いずれかの条件を満たしている場合は、受験申し込み時に申請することで午前Ⅱ試験から受験することができます。

応用情報技術者試験(AP)に合格後、2年以内

・情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格後、2年以内

・情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を収めてから、2年以内

午前Ⅱ試験も多肢選択式の試験ですが、より専門性の高い問題が出題されます。過去問の学習に加え、参考書で知識を深めておきましょう。

・午後Ⅰ・午後Ⅱ試験

午後Ⅰ試験は90分間の記述式試験で、4つの大問から2問を選択して回答します。与えられた記述を読み、問題点や改善点を回答していきます。一問につき問題用紙5~6ページにおよぶ長文の記述があり、すべての内容を瞬時に理解するのは難しいため、先に設問に目をとおして「何が問われているのか」を把握するとよいでしょう。

午後Ⅰ試験は過去問の学習をとおし、問題慣れしておくことが重要です。また、参考書などで知識を再確認しておくとよいでしょう。

午後Ⅱ試験は120分間の論述式試験で、3つの大問から1問を選択して回答します。説明文を読み、3つの設問を「経験と考えに基づいて」論述することになります。

論述は文字数の指定があり、設問アは「800字以内」、設問イは「800字以上1600字以内」、設問ウは「600字以上1200字以内」とかなりの文章量となります。試験勉強では、参考書でのインプットのほかに、手書きで小論文を作成する訓練も積み重ねておくことが大切です。

システムアーキテクトは求められるものは高いが、その分やりがいがある!

システムアーキテクトは求められるものは高いが、その分やりがいがある!

システムアーキテクトはエンジニアであると同時に、経営戦略に参画しシステム開発の面からビジネスモデルを支え、コンサルティングしていく総合的な立場にあります。

その証明となるシステムアーキテクトの資格は毎回10%台という取得困難な国家資格ですが、保有することによって多彩なキャリアプランを描けるため、IT開発に携わるエンジニアとしてはぜひ取得を目標としたい資格といえます。

システムアーキテクトに対する需要は、システム開発が複雑性を増す中で今後も伸びていくと考えられています。求められる水準が高い分達成感も強くやりがいのある仕事なので、取得を視野に入れ、転職を目指してはいかがでしょうか。