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WOMAN*IT
制約条件を楽しむ ― 「普通の人」でも夢を実現できる方法

2010.04.27
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第4回目は株式会社ロフトワーク 代表取締役 林千晶さんにお話を伺いました。林さんは大手化粧品メーカーでマーケティング部門に勤めた後、ジャーナリズムを学ぶ為にアメリカへ留学。その後帰国し、総合制作代理店ロフトワーク社の立ち上げをされました。あいにくの雨の日の取材でしたが、とにかく元気いっぱいの明るいキャラクターで、私たちWOMAN*ITメンバーも元気をたくさん頂きました。とにかく隅々までポジティブシンキングな林さんの考えが少しでも皆さんに伝わればと思います。

これまでのキャリアを教えてください。

株式会社ロフトワーク 代表取締役 林 千晶さん株式会社ロフトワーク
代表取締役
林 千晶さん
1994年、早稲田大学商学部卒業後、大手化粧品メーカーに入社しました。化粧品メーカ―では、日用品・化粧品の商品開発、広告プロモーション、販売計画まで幅広く担当していました。1997年に退社して、米国に留学。大学院卒業後は共同通信NY支局に勤務し、2000年に帰国しています。クリエイターコミュニティを主体とした新しいスタイルの制作代理店「ロフトワーク」を立ち上げたのも、結婚をしたのも同年です。
現在は、米国NPOクリエイティブ・コモンズ アジア・プロジェクト・コーディネーターも務めていて、クリエイティブ・コモンズの普及活動に努めています。また、大変うれしいことに、2009年は第7回Webクリエーション・アウォードWeb人賞もいただきました。

林さんの転機はどんなときでしたか?

大手化粧品メーカーのマーケティング部門を退職したときですね。私は、女性の不安定肌向け化粧品プロジェクトへ参加し、ストレスに負けない肌を作る化粧品を作るためのユーザー調査を行っていました。ちょうど「敏感肌/不安定肌」という言葉ができた時代です。調査を続ける中で、当時多くの女性が敏感肌で、その原因が仕事にあることがわかりました。「凛とした自分になりたい」、「軸を持ってやりたいことができる自分になりたい」という憧れがあるものの、その理想と現実のギャップが大きなストレスになっていたんです。そのとき、私が思ったのは、「女性のストレスは化粧品だけでは解決できない」ということでした。

なぜなら、私もまた、同じだったのです。たとえば、誰もが知っている大手企業にいる限り、大手のネームバリューでしか自分を見てもらえません。それは、ひとつの悩みでした。この仕事は私じゃなくても、誰がやっても同じなのではと思ったり……。そうではなく、「≪林千晶≫にしかできない生き方をしたい!」とだんだん感じるようになっていたのです。働く意味、生きる意味がわからない、「女性のストレス」というのは、自分の悩みでもあったと気づき、プロジェクトの区切りに合わせて退職を決めました。

退職後はどうされたんですか?

最初に思いついたのは、アメリカを見てみたいということ。いつも、日本の手本となっているけれど、どのくらい良い国なのか? 日本と何が違うのか?……など、色々な意味で関心がありました。 また、物ではなく「情報」に関わる仕事をしたいとも思っていました。世の中は、物で満たされる時代ではなく、精神的な価値観を重視したライフスタイルの時代に移っている。ジャーナリストになって、みんなが元気になるような情報発信をしたい。色々検討して、結局、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科へ留学しました。

大学院卒業後は、共同通信NY支局で経済記者のアシスタントとして勤務しました。記事のテーマは、転職、派遣、終身雇用など働き方など。企業へインタビューなどを続ける中で、「起業」という概念に出会ったのもこの頃です。さらにその後、日本の新聞社に入りたくて、アメリカから応募をしたのですが、うまくいかず……。その転職がだめだったので(笑)、もともと仲間から誘われていたインターネット業界で、ロフトワークを立ち上げることになりました。誘ってくれたのは、現在も一緒に代表取締役として経営をしている諏訪です。

ロフトワークとはどんな会社なのでしょうか?

林 千晶さん日本最大のクリエイターネットワーク「Loftwork.com」を核にした、総合制作代理店です。一般的な制作会社のように、社内にデザイナーやプログラマー(=クリエイター)を抱えるのではなく、クライアントの注文ごとに「最適なクリエイティブチーム」を編成し、制作を行っています。社内スタッフのほとんどは、プロデューサーもしくはディレクターで、プロジェクトマネジメントと専門知識のプロフェッショナルが、進行管理やマネジメントを行い、クリエイターとクライアント両方に的確なサービスを提供していく仕組みです。

「クリエイターとクライアントを結びつけるプラットフォーム」。これがロフトワークの根本です。みんなに、自分に自信を持つためのきっかけを持ってもらいたいんです。きっかけを与え合い、励まし合うことで無限の可能性が広がると思っています。オープンであること。世界に目を向けること。
Win-Win-Winのビジネスモデルが理想。クリエイター、クライアントと、ロフトワークの三者間がハッピーになれることが理想ですね。

私は、適正なマッチングが行われたとき、価値が創造されると信じています。これを、人の才能(クリエイティビティ)で行いたい。そう思ってはじめたのがロフトワークなんです。

くじけそうなときはありましたか?

たくさんありますよ。今でもあります。
一番くじけそうだったときは、やはり会社を作りたてのときですね。何か新しいことをしようとしたとき、ほとんどの人に理解を得られません。日本は安定を求めるので、何か変化を起こそうとした場合、たいてい9割は反対されることが多いですよね。私も起業することをたくさんの人に反対され、大手企業に戻ることを勧めらました。同時に、大手企業のネームバリューというものを痛感しましたね。

そんなとき乗り越えられたのは?

たった一人でいいから、自分の夢を応援してくれる人がいることはとても大事です。サポートしてくれる両親、一緒に起業してくれた仲間がいたから乗り越えられました。その中でも、JOI(伊藤穣一氏)は最も尊敬する人の一人ですね。どんなときにも、私のやりたいことをやっていいよと応援してくれ、今でも私のメンター的な人です。

会社経営と子育てを両立することに勇気は必要でしたか?

すごく勇気が必要でしたよ。実は、2000年前後の約半年間で、アメリカからの帰国、日本での起業、結婚、妊娠が立て続けに起こったんです。

妊娠は、起業して早々にわかりました。会社も軌道に乗る前だし、子育ても初めて。どちらも未知の世界で、とても戸惑いました。だけど、主人から「全部面倒みるから産んで欲しい」と言われ、その後仕事のパートナーである諏訪も「僕も面倒みるよ」と言ってくれたんです。大きな判断でしたが、子育てをする道を選びました。今でも毎日分担制でいろんな人に子どもの面倒を見てもらっています。
時間の使い方、消費行動など、女性にとって一番大きな変化があるのは、結婚ではなく、出産というライフイベントだと思います。

起業と子育て、その両立は実際どうでしたか?大変でしたか?

出産して本当によかったと思います。もし今、仕事が忙しくて出産を悩んでいる人がいるのなら、私は迷わず産むことをお勧めします。
仕事のポイントは、「制約条件を楽しむ」ことだと思うんです。制約条件があるから、人生は意味がある。最大の制約条件は死ぬことですよね。終わりがあるから、今頑張ろうと思える。そして、実は、制約条件があってもなくても最終的なアウトプットはほとんど変わらないものです。
だったら、子どもがいることによって、時間に制約ができ、優先順位の付け方や時間の使い方を磨こう!……という考え方もできます。実際、私も毎日がライフハックで(笑)。出産してからは生産効率をすごく意識できるようになりましたよ、本当に。子どもは強制的にモードを切り替えてくれる存在。子どもから得るものも多く、心から産んでよかったと思います。

林さんの働き方、制約条件の楽しみ方とは?

子どもを産む生き方、産まない生き方どちらもあると思いますが、成果志向になることが大事だと思います。

何を成果として出したいかと考えたときに、ある制約条件に対して不平不満を言っても結果にはつながりません。仕事も楽しくないですよね。だから、制約を逆手に取ってチャンスに変えるんです。

成果を出すということを常に追求すると、その制約条件をどう活かすと結果につながるかなという発想になります。結果を出せたら、自分も嬉しいし、周りからも評価されますよね。私は、制約条件のある働き方を、解きがいのある楽しいパズルゲームだと思っていますよ。

今後やりたい事について教えて下さい。

ロフトワーク社として

1つめは、若手クリエイターへチャンスを与えるプラットフォームとして、クリエイターポータル「Loftwork.com」をワールドワイドに展開する事。クリエイティブに関するハッピーなマッチングを増やしていきたいと考えています。日本のクリエイターを世界へ、世界のクリエイターを日本へつなげる、働く場所に関係なくもっとクリエイターが流動できるような仕組みに育てていきたいです。

2つめは、Webの価値を再発見すること。 ネットが普及するまでの間のWebは「大手のプレイヤーから不特定多数へ」という構造でしたが、 今後は新たに「NとNを結びつけていく動き」が加速していくでしょう。例えば、「サービスグラント」という、労働力を提供する事によってNPOを支援していこうという活動があります。具体的には、Webサイト制作が得意な人が、Webを作る労働力で支援したり、法律家が、法律に関する相談に乗る事で支援をしています。ものすごく多くの人が、世界に対して貢献したいと思っているわけです。そこでロフトワークとしては、マスコラボレーションとしてのWebサービス、「新しい価値観を提供し合う為のWebプラットフォーム」に再度チャレンジしていきたいです。

個人として

個人的には、もともと「教育」に関心があるんです。なので、これからは、自己満足的に一人だけに教えるという意味ではなく、みんながよりよくスキルアップする為のきっかけを与える方法について考えてみたいです。そして、教育フィールドに貢献したい。これは私の長年のテーマですね。

最後に読者に一言メッセージをお願いします!

いつか自分のやりたい事ができるようになったら絶対に言おうと思っていたことがあるんです。
それは、「私は普通の人です」ということ。起業をする人や、仕事が良い方向に行っている人って、なにか特別な人だから……ってイメージが根強い。でも、そんなことはないと思います。私自身も学生時代の就職活動で、面接官に「他の人といかに違うか」「自分がどれだけ特別か」をアピールして欲しいと言われることが一番つらかった思い出があります。そのときは本当になにもなくて、「普通自動車免許」ぐらいしか書けなかった(笑)。
何もできない自分がいるから、新しくはじめるしかなかったんですよね。だから、「普通の人」と「特別な人」を分けずに、自分が何をやりたいかを問いかけ、しっかり考えていくことが重要だと思います。

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