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渡辺千賀のはたらけシリコンバレーvol.4 バブルがくるくるやってくる
シリコンバレーで働くということ(2/2)

2008.01.15
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バブル再来

しかし、2003年の終わり頃から徐々に景気は上向き始め、2004年の豪華絢爛なグーグル上場で一気に盛り上がる。歌の中ではこんな歌詞になっている。 「ハッピーな日々が戻ってきた。ラリーページ、セルゲイブリン、俺もあいつらみたいになれるようビジネスプランを書くぞ」

歌は以降、シリコンバレー起業バブルの狂騒ぶりをなぞる。 Find yourself an engineer
Feed him pizza,buy him beer
「エンジニアを捜して、ピザを食べさせて、ビールを飲ませろ」

エンジニアはなぜか食べ物に弱い。冷蔵庫には無料の飲み物があふれ、キッチンには無料のおやつが山積み、というのが「シリコンバレー技術企業のあるべき姿」である。ベーグルやらドーナツやら果物がこんもりとある「無料朝食の日」、ピザとビールが出される「パーティーの日」が週一であるのも一般的。

シリコンバレーのオフィスでは、日本に比べ単位面積あたりの社員数が少ない上にキュービクルや個室に分散しているため、社員同士の交流が少ない。そこで、食べ物で釣って交流を促し結束を高めるという目的もあるのではあるが、一方で「食べ物=幸せ」という社員側の習性も無視できない。

食堂そのものが常に無料なのはグーグルくらいだが、飲み物とスナック程度はふんだんに与えられる会社が多く、特にバブル期にはやたらとオフィスに食べ物があふれることになる。それを歌では「ピザとビール」と表現した訳だ。

以降バブルの描写が続いた後に、歌は住宅事情へと移る。いわく 「100万ドル稼ごう。ちょっとはスキルもいるけどほとんど運だ。これで小さい家の頭金が出せる。ちょっと大きい家が欲しいと思ったら、配偶者も100万ドル稼いでないとダメだけどね。」

シリコンバレーではストックオプションなどで一攫千金の夢があるのに加え、キャッシュでもらう給料相場も高い。特にソフトウェアエンジニアでは、日本に比べて軽く二倍はあるのだが、残念ながらその分住宅も大変高い。

中西部の田舎町出身のアメリカ人の知人が、シリコンバレーはパロアルト市の家を買うのに、頭金を親に借りようとして 「この家を買うから5万ドル(500万円強)貸してくれ」 と実際の小屋状物件を見せたら、 「頭金じゃなくて、この家の値段トータルで5万ドルの間違いじゃないのか?」 と聞かれ、いや値段は100万ドル近いと告げたら 「こんな家にそんな価値は認めない」 と貸してくれなかったそうである。ま、アメリカの常識からするとシリコンバレーの住宅の高さは異様だ。賃貸でも簡単に月20万円近くなるので、心してかからないといけない。(東京の中心地と比べれば、面積あたり単価は低いのであるが、小さい物件が存在しないので。)

というわけで、共働きでがんばるのがシリコンバレーの「普通の家庭像」なのである。これを豊かと見るか貧しいと見るかは個人の価値観の問題。

起業を促進する環境

さて、この歌の最後には、起業を促進する環境の真実が詰まってもいる。いわく Here comes another bubble,
And when we are gone,
This will still go on, and on, and on, and on
「またバブルが来た。僕たちがみんないなくなった後も、こうやって何度も、何度も、何度もバブルが来続けるんだよ」

私が日本からシリコンバレーに移り住んだのが2000年。日本の、緩やかでありながら後戻りできないバブル崩壊を10年間目の当たりにした後でシリコンバレーでインターネットバブルを見た。その時は 「バブルとその崩壊は、サイクルから言って、一人の人間の生涯で一回しか見られないのが普通だろう。それを二度も見た私って歴史的に見て珍しい人間かも」 とちょっと得意に思ったのだが、また一方で 「私の人生の間に二度とあの楽しいバブルが来ることはないだろう。残念なことだ」 としみじみと感慨に耽ったものだ。しかし、それからたった4年でグーグルがスーパー上場を果たし 、2007年は、数千億円、数兆円という驚くべき金額の企業価値がベンチャーにつく時代になった。

バブル崩壊というのは、その場にいる人間にとってはかなりつらく苦しいものだ。そのつらさを経験した人間は、バブルの狂乱を反省し、さらには羹に懲りて膾を吹く状態になることも多い。というか、普通の人間だったら、そうなるはず。ところがシリコンバレーでは、ほんの数年前に著しいバブル崩壊の痛みを共有した人たちが、もう一回バブルに乗ろうと躍起になる。

それを「単なる拝金主義」と言うのは簡単だが、拝金主義であればあるほど、むしろその大事な金を失った痛い記憶が残るものではなかろうか。

シリコンバレーでバブルが繰り返される根元にはやはり、「技術への愛着」「株式市場・資本主義への本質的な信頼」、そして「そういった全てを包含する、新しいビジネスを生み出すシリコンバレーというシステムへの信念」があるのではないか、とYouTubeを見ながらしみじみと考えたのであった。

いずれにせよ、ここで歌われるジェットコースターのような山あり谷ありがシリコンバレーのありのままの姿。YouTubeページへのリンクを送ってきた知人のメールにも 「シリコンバレーにいるんだったら、良い時も悪い時も両方楽しめないとね!」 とあったが、まさにその通りです。

Here Comes Another Bubbleのミュージックビデオへのリンク http://www.metacafe.com/watch/958560/here_comes_another_bubble/

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渡辺千賀プロフィール

渡辺千賀

シリコンバレーのコンサルティング会社、Blueshift Global Partners ( http://www.blueshiftglobal.com/ ) 社長。 技術関連事業での日米企業間アライアンスと、先端技術に関する戦略立案を行う。 商社と戦略コンサルティング会社での経験を生かし、口も足も動くコンサルティングを実践している。 また、シリコンバレーで働く日本人プロフェッショナルをサポートするNPO、Japanese Technology Professionals Associationの共同代表も務める。 東京大学工学部都市工学・学士、スタンフォード大学MBA。 三菱商事、マッキンゼー、ネオテニーを経て現在の会社を起業。

Blog : On Off and Beyond ( http://www.chikawatanabe.com/

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