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正社員より契約社員がクールゲームは、企画、プログラム、サウンド、デザインというセクションに分かれている。リソース(CPU、メモリ、記録媒体)という面では、他の要素に比べるとサウンドが確保できるのは少なくなってしまうことが多い。 その限られた容量でどこまで表現力を高くするかが腕の見せ所だ。テクニカルリサーチには、エンジニアとして実績があり、しかも特定分野で突き抜けた優れた人ばかりで、本質をすぐ見抜くような人たちが集まっていた。 また、サウンドセクションのリーダーもプログラマ出身でハードウェアにも詳しく、ドライバなどは自分で書いてしまうような人だった。 本間さんは、こうしたやりがいのある仕事についたわけだが、一方で、音楽制作の仕事も頼まれることが多く、アルバイトとしてこっそり続けていた。これは、だんだんと社内の他の人の知るところとなる。会社の給料とは不釣り合いな住居に住み、不釣り合いな車に乗っていたからだ。が、秘密のアルバイトが知れた後も、上司や会社は目をつぶってくれた。ゲーム業界の性質上、社員は同様な頼まれ仕事を抱える人たちが多かったせいもある。 一方、会社に入る以前から終身雇用制度の時代ではないことを意識していたこともあり、正社員という働き方にも疑問を持ち始める。同じ部署の先輩達が、自ら希望して正社員から契約社員になっていくのも目の当たりにした。その方が自由に他の仕事もできるからだ。 「契約社員にしてくれなかったら辞める」 と会社と交渉したらしい。その先輩は、特に優秀な人でもあった。 本間さんが元々感じていた「正社員として働くという時代ではない」という思いは、より強くなった。 退職・起業そして入社3年を目前にセガを辞め、大学院時代の友人と起業する事になる。 学生時代からの音楽関係の仕事でいろいろな人的ネットワークができており、その中からエンジェル投資家になる人も、共同経営者になる人も見つかった。 事業内容は、携帯に特化した顧客管理システムを作り、サーバのハウジングとシステムのメンテをセットにして販売する、というもの。対象は、勝手知ったる音楽・エンターテイメント業界だ。誰に働きかければどう売れるかわかって始めた仕事だ。事業は順調に伸び、百数十社のクライアントを獲得した。 さらに、他社が作った携帯コンテンツを、機種にあわせて最適化する仕事も始めた。携帯電話は半年ごとに新しいものになるので継続的に仕事が来るので、顧客管理システム同様、長期的な成長が見込める。社員は45人くらいになり、だんだん経営も人に任せられるようになった。 そうして一息ついたところで、アメリカ行きの夢が頭をもたげた。 中学時代のホームステイ以来、いつかはアメリカで働きたい、と思っていたのだ。30歳を過ぎて、そろそろ実行に移さないと一生実行できない、と決意。思い切って、会社経営は人に任せることにした。そして、セガ時代の先輩が立ち上げた会社のサンフランシスコ支社にマーケティング副社長として入社、渡米する。 正論で働く今は、その会社で、ゲームのミドルウェアのマーケティングをしている。相手は世界のゲーム開発会社で、アメリカだけでなくヨーロッパの会社もある。生活は、毎日10時ごろ出社、6時に帰るのが基本。週に一回、日本との電話会議があり、そのときは夜8時くらいまで会社にいる。時折、日本へ出張。アメリカ・日本双方で行われるカンファレンスに行くこともある。 日本の子会社とはいえ、サンフランシスコ支社の社員の半分はアメリカ人だ。 「個人の経験と、それに基づいた正論が重んじられる、というのが今の仕事の特徴です」 と本間さんは言う。 「何かを決める会議で、日本では役職の高い人が言った意見のほうに流れる傾向があるように思いますが、今の仕事では、役職ではなく判断や情報の正しさが重視され、役職の高低に関わらずストレートに意見が評価される。年齢も関係ありません。エンジニア、プログラマでも50歳過ぎの人もいて、日本だと年上だからと気をつかって話してしまいますが、アメリカでは、本質的な内容を単刀直入に聞ける。呼びかけもファーストネームですし。年上とか年下とかあまり意識しないですね」 開発予定の製品の仕様を決める会議のときに、開発リーダーやCOOとディスカッションすることも多い。 「開発リーダーは私より経験があり、学会にも論文を出しているようなエキスパートです。しかし、彼一人で仕様を決めてしまうのではなく、マーケティングサイドから事例を挙げたり根拠を地道に説明すると、意見を採用してもらえることがほとんど」 さらに、長らく関わってきた音楽のビジネスモデルも注意深く見守っている。 「音楽・エンターテイメント業界は、今ビジネスモデルが生まれ変わっている最中です。いわゆる音ゲーにしてゲームアプリごと売る、アニメの主題歌にして売る、といった組み合わせが工夫されています。メディアミックスは昔からありましたが、そんな中で何が出来るのか模索中です」 日本のコンテンツ業界への期待一方で、ゲームやアニメは現在の日本が世界に誇る産業でもあるわけだが、本間さんは、日本はもっと大きなビジネスを狙えるはず、と言う。 「日本のコンテンツ業界の人が、日本の外での利益配分のあり方をよりよく理解し、外に出て行けば面白いビジネスチャンスがあるのに、とも思います」 たとえば本間さんの入っているビルには、Crunchyrollという会社が入っている。この会社は最初は細々と日本のアニメに勝手に字幕をつけて配信していたのだが、Venrockというメジャーなベンチャーキャピタルから4億円ほど投資を受けることになった。そのとき、日本のアニメ関係者は「違法なのに」と文句は言ったが、「投資も受けてきちんとした会社でやっていくのだったら、正当な権利者である我々に利益を分けろ」というネゴにはならなかったらしい。 「ひどい、ひどくない、といった感情論ではなく、論理的に相手や周囲を説得して、クリエイティブに相手と自分が折り合える落としどころを探し、取れる利益をきちんと取る、というプロセスをこなせる人が、日本のコンテンツ業界にはまだまだ少ない気がします。訴訟もこのプロセスの一環ですが、訴訟してお金を取る、という文化にもなかなか日本人はなじめません。本当はこうした丁々発止なネゴができれば、もっとビジネスチャンスがあるはずなのですが」 日本人がアメリカで働くということ「アメリカに来て2年たちましたが、やはりチャンスが沢山ある場所だ、と体感しています。アメリカという国に興味はあるが苦手意識もある、という人は、是非一度来てみると良いと思います。人から聞く情報、インターネットで調べてみる情報はあくまで他人の価値観のフィルターをかけたもの。こちらで生活して自分の価値観と、自分の目で情報を受け止めてみると、全く違うことがわかります。もちろん、アメリカにも問題は沢山あります。インターネットも遅いし。でも、日本で当然のものとして手に入っていたものが当たり前でなくなって、初めてありがたさに気付かされます。慣れ親しんだ日本を出ることで、いろいろなものに感謝の気持ちを感じられるようになり、基本に立ち戻れた気がします」 これだけインターネットで情報共有化が進み、平均化される世界の中でシリコンバレーはまだまだ刺激的で、個性に富んだ人に出会える。 本間さんはさらに、アメリカに来てから知り合った人と、環境系のビジネスを起業しようと画策中だ。起業家精神に溢れる本間さんのこれからに期待したい。 このレポートに関するご意見・ご感想は下記までお願いします。
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