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渡辺千賀のはたらけシリコンバレー行動し続けていれば、時として失敗しても必ず次のチャンスが訪れる(2/2)

2008.05.26
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オーナーとの決別後アメリカへ

しかし、だんだんと事業オーナーの医師と意見の相違が出始め、5年を過ぎる頃にはそれは越えられないものになってきた。

事業は上手くいっていたのだが、将来のことも考え、吉澤さんはこのネットショップから手を引くことに決める。

といっても、システム構築と日々の経営の両方をやってきたのは自分ひとり。すぐには辞められない。そこで1年かけて体制を整え、吉澤さんの代わりになる人も見つけ、2006年に退職した。

ここで吉澤さんは 「シリコンバレーに行こう」 と決意する。

日本で新たなネットショップを始めるという選択肢もあった。そのための貯金もあったし、上手くいく自信もあった。しかし、吉澤さんの中では、ネットショップは「本物のネットベンチャー」ではないという気持ちがあった。

その気持ちを吉澤さんはこう語る。

「アメリカに行こうと思ったのはザリガニの本場だから・・・・ではありません。最初に自分で起業したe-まちねっとはからっきしだめ、その次のネットショップは、そこそこうまくやれましたが自分の会社ではないし、本物のベンチャーでもなかった。そこで、本場のシリコンバレーにいって、自分でベンチャーをたちあげるか、あるいはそれが無理でも、その一員として働きたいと思ったのです。」
英語でビジネスが出来るようになったら幅も広まるだろう、という気持ちもあったと、言う。

最短でシリコンバレーの企業で働く方法

いろいろ調べてみると、シリコンバレーで働くには就労ビザが必要で、それを手に入れるのは中々大変なことがわかった。しかし、アメリカの大学を出れば、卒業後1年間、学生ビザのまま就労可能なOPTなる制度がある。とはいえ、既に大学院まで出た吉澤さんが再度フルの学生に戻るのは無駄が多い、と感じた。そこでさらに探すと、カリフォルニア大学サンタクルーズ(UCSC)校の分校がシリコンバレーで見つかった。ここでは9ヶ月で大学卒業と同等の証書が出る。

勉強の対象としてマーケティングなどの領域も考えたが、就職先の仕事が学校で勉強した分野と同じ領域でなければビザが出ない。英語がつたない人間がマーケティングで職を得るというのも難しそうだ。それより、エンジニアとして職探しをするほうがずっと確率が高い。UCSCの分校ではプログラミングも教えている。

UCSC分校に通うことを決めた吉澤さんの行動はすばやく、ネットショップベンチャーをやめて3ヶ月後にはもう渡米していた。

ただし、いきなり分校にはいかず、UCSCの本校で英語コースをまず受講することにした。というのも、分校入学にはTOEFLの点数550が必要だったからだ。TOEFLを受けたことはなかったが、受けたとしてもダメだろうと判断、半年間英語に集中することにした。結果、無事TOEFLもクリア、分校に通い始めることとなった。

幸運の波に乗りVMWareに就職

9ヶ月の分校生活を経て"Linux / Unix Administration and Program Certification"を取得、VMWareに就職した吉澤さんだが、就職に際しては努力に加え運も大事だった、と言う。

一つ目の運が取った授業の内容だ。

分校では、Linuxのカーネルなど、なるべく難しそうな授業を選んで取った。それまで独学でプログラミングを習得してきた吉澤さんとしては、あえて学校で教えてもらうのであればできるだけ難しいものがよい、と思ったからだ。その一方で、登録していた授業が開始直前にキャンセルになり、やむなく取ったPythonの授業 もあった。「いまさら授業料を払ってPythonか・・」とがっかりしたのだが、それでもまじめに勉強し、オールAで卒業することとなった。

就職先を探していると、VMWareがPythonとLunuxのカーネルがわかる人間を募集しており、嫌々取ったPythonがここで意外な効果を発揮した。

さらに、もう一つの運がインターンだった。

UCSCの英語コースでは、授業の一貫として学校側がインターン先を探してくれるプログラムがあった。通常のインターン先は、シリコンバレーから少し離れたサンタクルーズにある工場などが主だったが、吉澤さんは
「どうしてもシリコンバレーの会社で」 と依頼し、学校の担当者にEmbedded Works(http://www.embeddedworks.net)という会社を見つけてもらった。

Embedded Worksは、無線系モジュールを開発・販売する正社員二人のこじんまりした会社だった。しかし、小さな会社の方がきちんと仕事をさせてもらえるだろう、という目論見から、採用の電話面接に挑戦。相手の言っていることは皆目わからなかったのだが、無料のインターンだったこともあって無事採用となり、週3日インターン、残りは授業、という毎日を送ることになる。

Embedded Worksでは、会社のサイト構築などを地道に行う。ここでの仕事振りが気に入ってもらえたようで、英語コースで3ヶ月間だけの予定だったインターンはシリコンバレー分校卒業まで続き、さらにCEOとは今でも友達づきあいをする仲となった。

一方、VMWare就職試験では、最終段階で会社からリファレンスを求められた。リファレンスは、応募者がそれまで仕事を一緒にした人などに、応募先の会社が直接応募者の評判を聞くこと。ここで、Embedded WorksのCEOが力強いリファレンスをしてくれた。

「インターンをしていなかったら、就職できなかったかもしれません」

と語る吉澤さんである。

自由な社風と雄大な自然

こうして、行動と運のかいあって、渡米1年数ヶ月でシリコンバレーの優良企業への就職を果たし、2008年1月からVMWareで働き始めた吉澤さんだが、会社の風土には
「ここまで自由でいいんだ」 と驚かされるそうだ。吉澤さん自身、日本では社員に自由に楽しく働いてもらいたいと思っていたが、自由のレベルが全く違う。

仕事で成果を出す以外に、ルールらしいルールが何もない。

まず、在宅勤務が自由にできる。週に2-3回は家から働くのが普通で、しかも会社に来ないことを当日メールで伝えてくる。その上、
「今日は妻の誕生日だから早く帰る」 などと言って2時に帰ってしまったりする人もいる。

さらには日常的に帰宅が早い。吉澤さんは通勤渋滞回避のために夜は7時までいるが、その頃になると社内も駐車場もガラガラ。シリコンバレー中の人が通勤で使う高速道路が7時にはもう渋滞していないところを見ても、他の会社もみんなこんな感じらしい。「こんな働き方でよかったんだ」と、拍子抜けしたように語る吉澤さんだ。

さて、そんなこんなでアメリカに来て1年半が過ぎた吉澤さんだが、当面の目標はVMWareの中でよりコアな開発に携わること。また、英語ももっと勉強して、大勢が議論する中できちんと自分の意見が言えるレベルになりたい。さらには、長くシリコンバレーで働くためにも、H1Bビザ(現在会社のサポートにより申請中)、そしてグリーンカード(永住権)取得も大事なマイルストーンだ。そうした具体的な目標を、物静かに、しかし意欲的に語る。

そんな吉澤さんは、シリコンバレーの大自然が気に入っている。勤め先のVMWareすら牧場に隣接している。通勤時に通り抜ける風景は、360度全く建物が見えない中にゆるゆると牧草地が広がり、馬や牛が点々といる、というもの。アイベンアールというアメリカの画家の絵から抜け出たような景色だ。

さらには、毎週末サーフィンにも興じる。シリコンバレーから30−40分ほど車を走らせて海辺のサンタクルーズに行けば豪快な波が楽しめるからだ。

いつかはシリコンバレーで起業を

吉澤さんのこれまでの人生は、
「行動し続けていれば、時として失敗しても必ず次のチャンスが訪れる」 というルールを体現するものだった。

ザリガニを前に逡巡した日も、6年間を費やした事業から身を引かなければならなかったことも、力強く道を切り開く吉澤さんの大事な一部となっているのである。

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渡辺千賀プロフィール

渡辺千賀

シリコンバレーのコンサルティング会社、Blueshift Global Partners ( http://www.blueshiftglobal.com/ ) 社長。 技術関連事業での日米企業間アライアンスと、先端技術に関する戦略立案を行う。 商社と戦略コンサルティング会社での経験を生かし、口も足も動くコンサルティングを実践している。 また、シリコンバレーで働く日本人プロフェッショナルをサポートするNPO、Japanese Technology Professionals Associationの共同代表も務める。 東京大学工学部都市工学・学士、スタンフォード大学MBA。 三菱商事、マッキンゼー、ネオテニーを経て現在の会社を起業。

Blog : On Off and Beyond ( http://www.chikawatanabe.com/

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