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林さんは、シリコンバレーにそそり立つ鏡面ビル、オラクルでプログラマとして働いている。地味な2-3階建ての建物が多いシリコンバレーで、オラクルの建物はかなり異色を放つ。10階ほどの高さしかないが、全体が丸みを帯びギラギラと銀色に輝くビルが何棟も並ぶ様は圧巻。その脇には、幅にして数百メートルはあろうかという広大な池があり、その中央には、まるで消防車のホースから出てくるようなまっすぐで雄々しい噴水が数十メートル吹き上がっている。 脳内プログラミングそんなオラクルの丸いビルでプログラミングをしている林さんは 岐阜県で育った。
「こう書くとこういうことが起こるのか」 と「脳内プログラミング」をして楽しんでいた。これが小学校4年生くらいのとき。その後中学1-2年の頃、パソコンと言う言葉が流行り出したこともあって親がパソコンを入手。しかしあまり触らせてもらえないまま年月が過ぎる。 そして地元の高校から東大に進学。 ここで始めてプログラミングを本格的に始める。タイピングが嫌いで、特に仮名漢字変換の面倒さ加減には驚く。が、ローマ字だけで完結するプログラミングは、なかなか楽しいことを発見する。 しかし、専攻は機械工学を選んだ。東大の理工系の学部では入学してから専攻を選ぶ。最初は宇宙に憧れて宇宙工学に行きたいと思ったのだが、話しを聞いてみると理論ばかりで機械に触ることがなさそう。メカ好きだった林さんにはそれがものたらず感じられ、代わりに必ず機械に触れる機械工学へと進んだ。 そして進路を考える4年生になる。この時は、ずいぶん会社見学をして、電機、自動車などいろいろな会社に行った。しかし、どこにいってもしっくりこない。 しかも、 「どうやら、どの会社でも若いうちには大きな仕事ができるチャンスはほとんどない」 ということもわかった。また、どの会社でも東大理系のOBに会ったのだが、会う人がみな似た雰囲気だ。このままでは、なんとなく浮いている今の大学生活と同じような環境が待っている・・・という危険も感じる。さらには、 「出社拒否になってそのまま会社を辞めた負け犬の同僚の話」 を楽しそうにするいじめっ子のようなOBもいた。「絶対こんな会社には入らない」と心に誓ったのだが、他に行きたい会社があるわけでもない。 そこで、 「とりあえず院に行ってしばらく考えよう」 と大学院に行くことにした。 勉強は好きだったので、院に進む事自体には全く抵抗はなかった。 コンピュータ系への転向そんな林さんの転機になったのは、院時代に受けたIAESTEという海外インターンを行う組織。それも、インターンをしたことが転機になったのではなく、インターンに行けなかったことが転機になった。 IAESTE自体の選考にはパスしたのだが、受け入れてくれる企業が見つからない。その年、機械工学のスキルをもったインターンを必要とする会社が少なかったのである。一方、受け入れ企業が要求するスキルにはプログラミング関連が多く、 「プログラムができると世界中どこへでも行けるのか」 と気づく。そこで林さんは考える。 「 自分が世の中に必要とされないのは寂しい。 それに、実はプログラミングはかなり好きだ。コンピュータ系に転向するか」 そこで 博士過程に行くのをやめ、ソフトウェア系とコンサル系にしぼって就職活動を開始した。 ソフトウェア系は数社受けたが、そのうちの一社に日本の著名ソフトウェア会社があった。この会社の資料に 「我が社ではオラクルとも仕事をしている」 と、まるでそれが名誉なことのように書いてあったのが、さらなる林さんの転機となる。 「えっ、オラクルのほうがいい会社なの?」 と思ったのだ。 オラクルに行きたかったもう一つの理由は、オラクルの本社がシリコンバレーだったから。 林さんが子供の頃見たルパン三世のアニメでは舞台は世界。しかも世界中の町が非常に魅力的に描かれていた。 「俺もルパンのように世界を股にかける男になりたい」 とその頃から何となく思っており、しかもコンピュータの世界ではシリコンバレーが有名な場所であることも知っていたので 「シリコンバレーで働いてみたい」 と思っていたのだった。 ・・・と、意気込みは大きかったのだが、オラクルの面接の申し込み期日を過ぎてしまっていた。電話しても 「もう締め切りました」 と断られる。どうしようかと思ったが、行けば何とかなるのではないか、と面接会場に乗り込むことにした。その場で 「もしキャンセルが出たら面接してください」 と申し出たところ、無事面接を受けることができ、トントン拍子に話は進み合格。 親には「なぜそんな会社へ・・」と嘆かれたが、 「この会社の方が自分が幸せになれる。もう日本の大企業で一生安泰という時代じゃないんだよ」 と押し切った。 そうして入社したオラクルは、当時大変景気がよく社内の雰囲気も明るい。会社がノリに乗っている時期だった。しかし、 意気揚々と入った林さんが配属されたのは「オラクル7からオラクル8への移行」 というやや裏方的なチーム。すぐ近くには、オラクル製品の新機能を習得し、それを日本市場へ啓蒙するチームがあり、 「新機能を触っている人たちがうらやましいなぁ」 と思いつつオラクル8への移行業務を続ける毎日。ことあるごとに 「新機能に移りたい」 と言い続けていたところ、2年ほどかけてやっと新機能のチームに移ることができた。 しかしここでも、やはり製品の開発をしているのはシリコンバレーの本社で、本社に行ってコアの開発がしたいという思いがつのってきた。 そんなころ、本社に出張する機会が訪れる。 この出張で始めてシリコンバレーにやってきた林さんは、最初の1日でシリコンバレーが好きになった。視界を遮るものがないくらい広い、天気が良い、しかもコードを書くのが仕事で、オフィスの中の環境も良い。 「これは最高だ」 と実感して日本に帰り、それからまた1年ほどして、今度は3-4ヵ月の長期本社出張をすることになった。本社の開発の人の近くで、QA(品質管理)的なことをして技術を覚えてくるための出張だった。 そして、その時はわからなかったが、この出張中にきちんと実力を発揮できたことが、やがて訪れる林さんの大事な転機のきっかけになる。 このレポートに関するご意見・ご感想は下記までお願いします。
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