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トップページてくらぼ渡辺千賀のはたらけシリコンバレーvol.1 一匹狼も100万人集まるとコミュニティになる

渡辺千賀のはたらけシリコンバレー
vol.1 一匹狼も100万人集まるとコミュニティになる

2007.11.20
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集団行動のために最適化された社会性

ミーアキャットという動物がいる。 カラハリ砂漠に住む、体長20センチほどのイタチのような外見の動物で、後ろ足ですっくと伸び上がって立っている姿が有名だ。 固い絆を持った家族が一団となって、集団で眠り、集団でえさ探しをする。 砂漠の夜は厳しく、重なり合って寝ることで暖を取る必要がある。 また、えさは土の中にすむ虫で、ひたすら穴を掘らないとえさに巡り会えない。 しかし、地中に頭を突っ込むようにして必死に掘っていると、ミーアキャットの天敵の猛禽類に頭上から襲われてしまう。 そこで、えさ探しは必ず集団で行い、一匹が見張りをする。 見張りは二本足で立って辺りをうかがい、天敵の姿が見えたら警告を発する。

ミーアキャットの集団の掟は厳しく、一匹のリーダーに全員が絶対服従する。 リーダーに嫌われたものは、群れの他の仲間からも激しいいじめを受け、群れから追い出されてしまう。 単独では厳しいカラハリ砂漠を生き残ることができないので、追い出されたミーアキャットは、群れから少し離れたところで群れを見続け、ひたすらリーダーの怒りが解けるのを待つ。(中には、他の群れに忍び込もうとするものもいるが。)

ミーアキャットはこうして何世代も何世代も、 「群れから外れたら死んでしまう」 という環境の中で過ごし、集団行動のために最適化された社会性を生み出した訳だ。 その中では、「自分の群れ」を離れることは恐ろしいことであり、独立は死を意味する。

シリコンバレーは楽?

一方、人間も一人では生きていけないわけで、長い年月の間に構築された様々なルールがあり、自分の属する集団を出たら生きていけないかも、という恐怖が根強くあるのは、社会的動物である以上当然のことではある。

しかし、その「当然のこと」を無視して、敢えてわざわざ海の向こうの知らない国に出て行って、そこに住もうと思った人たちが集まっているのがシリコンバレー。 アメリカそのものが移民の国ではあるのだが、それでも東部には数百年の歴史がある。 しかし、シリコンバレーは台頭してまだ数十年。 外国生まれが住人の数割を占め、親の代で移民してきた人も入れれば過半となる。 さらに、アメリカで生まれた人でも、テクノロジーに関わる仕事がしたいと、他の地域から敢えて移り住んできた人も多い。

もちろん中にはインドや中国をはじめとした発展途上国から、よりよい生活を求めて移り住んできた人たちもいる。 彼らには、「生活水準を向上する」という強い動機もあるが、日本はもはや先進国。 別にシリコンバレーに移り住んだからと行って、生活水準が圧倒的に向上する訳ではない。

そんな中、敢えて日本を出てシリコンバレーに住み着いた人たちは、 やっぱりちょっと癖が強い人が多い。

駐在員やその家族も含めるとシリコンバレーの日本人は1万人を超すようだが、そうではなく個人的にアメリカの会社で働いたり自分の会社を起業したりといった「単独系」の人もいる。 正確な数字は不明だが、「単独系」は3-5000人はいると思われる。

「単独系」でシリコンバレーに長く居着いている日本人には、やはり技術系の仕事に就いている人が多いのだが、その多くが 「別にシリコンバレーでなくてもどこでも働ける。日本だって問題なし。」 とは言う。言うのだが、 「どこでもいいなら、じゃあなんでずっとシリコンバレーにいるの?」 と聞かれると、 「うーん、それは・・・やっぱり楽だから」 となることが多い。

「楽」な理由は人それぞれではあるのだが、 「成果さえ出せば他は適当でいい」 といういい加減さもその大きな要因だ。(とはいうものの、これは、 「どんなに人間的によくできていても、成果が出せなければダメ」 ということでもあって、実は厳しい掟でもあるのだが。)

こうした、人間的な丸みが重んじられない風土もあって、「丸くない人たち」がたくさんいて、これはこれで結構お互いに仲良くしていたりする。

「キャラの立った人」がゾロゾロといるシリコンバレー

先日も、とある日本の大学が行ったシリコンバレー見学ツアーの一環として、日本人5人でパネルディスカッションを行ったのだが、パネルメンバーの発言には、良識ある社会人としての人間の丸みが感じられないものが多かった。

「無駄なミーティングはバカバカしいから出ない。」
「ああ、俺も。『バカバカしいからでない』と公言して出なかったこともある。」
「最初にQA(Quality Assurance)として採用されたが、1ヶ月で単調な仕事に嫌気がさして『QAなんてもう一分一秒たりともできない。R&Dに回せ』と上司に強行に要求。」
「今の仕事は3年やってもう飽きた。次を探し中。」

シリコンバレーは「偉い人」にも「丸み」と無縁な人がたくさんいる。 Appleのスティーブ・ジョブスも、Oracleのラリー・エリソンも、過激な発言、過激な行動の事例には事欠かない。 10数年前にノーベル賞を取ったUC Berkeley大学の教授も 「研究成功の秘訣はドラッグだ」 と公言したり。 某著名ベンチャーキャピタリストも、数百人の観衆を前にしたセミナーで 「『世界で最も有名なベンチャーキャピタリスト』とメディアで呼ばれていることについてどう思いますか?」 という質問を受けて 「ジャーナリストは全員うだつの上がらない負け犬だ。理工系の学部に行けなくて英文学かなんかを勉強しなければならなかった奴らに何がわかる。」 といった返答。(もしかしたら、単にシャイなのかもしれないが、そこまで言わなくても。)

というわけで、日本でいうところの「キャラの立った人」がゾロゾロといるシリコンバレー。 どんな人たちが、どんな働き方をしているか、会社はそうした変人たちをどうやって扱っているのか、といったことを、これから隔週でご報告していきたいと思います。

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渡辺千賀プロフィール

渡辺千賀

シリコンバレーのコンサルティング会社、Blueshift Global Partners ( http://www.blueshiftglobal.com/ ) 社長。 技術関連事業での日米企業間アライアンスと、先端技術に関する戦略立案を行う。 商社と戦略コンサルティング会社での経験を生かし、口も足も動くコンサルティングを実践している。 また、シリコンバレーで働く日本人プロフェッショナルをサポートするNPO、Japanese Technology Professionals Associationの共同代表も務める。 東京大学工学部都市工学・学士、スタンフォード大学MBA。 三菱商事、マッキンゼー、ネオテニーを経て現在の会社を起業。

Blog : On Off and Beyond ( http://www.chikawatanabe.com/

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